【シナジー】今更聞けないシナジーの本当の意味・使い方

2020年8月5日

定義

Synergyという言葉はギリシャ語に由来し、複数のものが合わさった時、それぞれ単体のものの価値の合計よりも大きな価値を生むことを指します。

日本語では相乗効果と訳されますが、意味が浸透してきた近年では、そのままシナジーと呼ぶことが増えている印象を受けます。

M&Aの世界において、シナジーは異なる企業が統合した時の価値が、それぞれ単体の企業価値の合計よりも高くなることを指します。

つまりシナジーが実現されれば、1+1=2+αとなり、αの部分がシナジーとなります。

単に1+1=2であればシナジーは0です。

シナジーという言葉は企業間のM&Aでよく使用され、企業間での平等なMergerの場合は、2つの企業が統合されることによってどんなプラスαを創造できるかを両社が考えなくてはいけません。

またAcquisitionでは買い手企業は売り手を買収することによって、どのようなシナジーがどうやって、そしていつまでに実現できるかを算出することが重要となります。

シナジーの種類と構成要素

シナジーはそのタイプによって以下のようにいくつかに分類されます。

  • Revenue Synergy (売り上げシナジー)
  • Marketing Synergy (マーケティングシナジー)
  • Financial Synergy  (ファイナンシャルシナジー)
  • Management Synergy (マネジメントシナジー)
  • Investment Synergy (投資シナジー)
  • Operation Synergy (操業シナジー)
  • Cost Synergy (コストシナジー)
  • Tax Synergy (タックスシナジー)

上記のシナジーは、以下の要素を組み合わせることによって構成されます。

  • 原料仕入れ先の共有・統合
  • 生産ラインの統合・革新
  • 製品・サービスの統合・革新
  • 販売網の共有・統合
  • 市場の共有・拡大
  • 社員・人材の融合
  • 技術力の統合・革新

代表的な要素を挙げましたが、どれも直感的に想像できるかものばかりだと思います。

簡単な例を用いて実際にどのようにシナジーが生み出されるのかを見て行きましょう。

例えば日本の文房具メーカーとイタリアのカフェが合併したとします。

これまでこの文具メーカーは機能性に優れた文房具で知られ、特に万年筆は使いやすく長持ちすると評判でした。

そこで合併によってイタリアのカフェの内装と店内の小物を手掛けるデザイナーの監修のもと、文具に高いファッション性を取り入れ、カフェで売れるようなお洒落なデザインにしました。⇒製品・サービスの革新・技術力の共有

そして日本とイタリアの両方でデザイン性の高い文房具を売る古風なカフェをオープンし、売り上げは増加しました。⇒サービスの統合、市場の共有

その際にはいくつかの既存の文房具店をカフェに改装し、文房具の在庫をカフェのバックヤードに保管することで貸し倉庫を使用する必要が無くなりました。⇒生産コストの削減

これまで日本で文房具を売り歩いていた優れた営業部隊は、イタリアのカフェを宣伝する上でも高い能力を発揮した一方で、カフェの店員も日本式の接客を身に付けホスピタリティが向上しました。⇒人材の融合

シナジーの算出

シナジーの中でもより実現しやすいとされているのが、サプライチェーンや生産工程の統合などによる費用削減に基づくコストシナジーです。

またシナジーの中には売り上げ増加や、生産コスト削減など、数値に表れ目にしやすいものがある一方で、人材の融合や技術の革新など目に見えにくいシナジーもあります。

こうしたシナジーは企業のバランスシート上でGoodwill(のれん)として現れます。

Goodwillはブランド価値・人的資源・技術力・開発/販売特許・顧客ネットワークなどのようなIntangible Asset(無形資産)の価値を示します。

企業の買収が完了した後には、買い手のバランスシートの資産の欄にGoodwillが記載されます。

例えば純資産10億円の企業を15億円で買収したとします。

この差額の5億円が、目には見えない無形資産・シナジーを表しています。

反対に、純資産10億円の企業を8億円で買った場合、Goodwillは差額の-2億円となり、負ののれんと呼ばれます。

負ののれんの計上を避けるため、買い手が買収を計画する上で買収後にどれだけのシナジーをいつまでに実現できるかの予測は非常に重要となります。

買い手が考慮すべき点として、買収により企業の経営層が代わって異なるリーダーシップや社風になることで、企業統合がうまく運ばない可能性があることです。

グローバル化が進む以前、経営スタイルや企業文化の違いは日本企業が欧米企業と合併する際に頻繁に問題視された障壁の一つでした。

近年では国際間のM&Aも増加し、異なる地域の企業間での相互理解が向上しました。

従って企業統合も以前より円滑になり、より精度の高いシナジーの予測が建てられるようになってきています。

まとめ

  • シナジーは異なる企業が統合した時の価値が、それぞれ単体の企業価値の合計よりも高くなることを表す(1+1=2+α。αの部分がシナジー)
  • シナジーには様々な種類と構成要素があり、特にコスト削減シナジーが実現し易い
  • シナジーはバランスシートのGoodwillに計上される
  • 価値のない吸収・合併ではシナジーが0のケースや負ののれんを計上するケースもある

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