【プロキシーファイト】ハゲタカは賢く買収を持ち掛け奪い去る

2020年8月5日

定義

Proxy Fight(プロキシーファイト)は日本語では委任状闘争、または委任状争奪合戦と訳されます。

その名の通り、株主が株主総会において株主提案を行い、可決のために他の株主の議決権行使の委任状を企業の経営陣や別の意見の株主と争う様子を示します。

まずは日本で起こったプロキシーファイトの実例を紹介します。

日本での実例

2007年6月のTBSの株主総会で、当時筆頭株主であった楽天グループがTBSに対して以下の2つの株主提案を行いました。

  1. 三木谷浩史楽天社長らの社外取締役選任
  2. 買収防衛策発動に株主総会の特別決議を必要とするよう定款を変更すること

1の提案は明らかに楽天がTBS内で発言力を強めるためのものです。

2は買収が持ち上がった際に防衛策の発動を鈍らせるものです。

2が可決されると当然買収に対してTBSは脆くなります。

2つの提案を加味すると、楽天(または関連グループ)が将来的にTBSを買収したい意図が透けて見えました。

そこで楽天は他の株主に可決に同意する様に説得を試みます。

しかし最終的にどちらの提案も反対多数で否決に終わりました。

以上は株主VS経営層+その他株主のプロキシーファイトの例でした。

続いて記憶に新しい例では、2015年に起こった大塚家具のプロキシーファイトが挙げられます。

こちらは大塚勝久氏と大塚久美子氏による創業一家内でのお家騒動でした。

結果は大塚久美子氏の勝利で幕を閉じました。

また昨年2019年6月にはLIXILグループの株主総会でプロキシーファイトが勃発しました。

前CEOであった瀬戸欣哉氏が自らを解任させた当時のCEO潮田洋一郎に対して、自身のCEOへの復帰と、自身が指名した取締役候補の選任を提案しました。

結果瀬戸氏がプロキシーファイトに勝利しました。

以上のようにプロキシーファイトは株主が自身の立場を強めたり、経営層を入れ替えたり、会社の規定を変えたりする目的のため利用されます。

M&Aにおけるプロキシーファイト

また、ある企業が他の企業から買収の話を持ち掛けられた際にもプロキシーファイトは勃発します。

対象企業の経営層は自社の売却に反対だが、株主は売却に賛成だとします。

この場合株主は他の株主の委任状を取得し、売却に必要なだけの議決権を確保し、売却案(または経営層の入れ替え)の可決に乗り出します。

こうしたケースは買い手企業が対象企業の株主に対してStock-for-Stock Mergers(対象企業の株主と買い手企業の株主を交換する仕組み)や、市場価値より高値で株式を買い取るなど好条件のオファーを提示した時に起こりやすくなります。

既存の株主からすると対象企業に見切りを付けて買い手の株主に交換したり、持株を現金化してしまったりする方が得策と考えるからです。

また対象企業の経営層を挿げ替えて、経営の立て直しを図る際にも株主はプロキシーファイトを提案します。

以上のようにプロキシーファイトは各々の利権を掛けた壮絶な戦いであり、時にはProxy Battleとも表現されます。

まとめ

  • 株主が株主総会で株主提案を行い、可決のために他の株主の議決権行使の委任状を企業の経営陣や別意見の株主と争うことをプロキシーファイトと言う
  • 株主提案の内容は単に自身の社内権力を強めるためのものや、会社の規定を変更するものなど多岐に渡る
  • M&Aにおいても対象企業の役員と買い手に賛同する株主の間でプロキシーファイトは頻繁に引き起こされる

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