【スタッガード・ボード】捻じれた役員会が会社を守る
定義
Staggered Board(スタッガードボード)は対象企業が敵対的買収に対抗するための事前策の一つです。
スタッガードボードでは、まず投票権を持つ対象企業のBoard of Directors(役員)をいくつかのクラスに分けます。
通常は3つから5つのクラスに分けられます。
例えば12人いる役員を4人ずつ3クラス(A・B・C)に分けたとしましょう。
この企業ではそれぞれのクラスは3年間の任期を持ちます。
クラス | 人数 | 就任 | 任期 | 任期満了 |
---|---|---|---|---|
A | 4人 | 2015年 | 3年 | 2018年 |
B | 4人 | 2016年 | 3年 | 2019年 |
C | 4人 | 2017年 | 3年 | 2020年 |
では2021年に任期が満了となるのはどのクラスでしょうか?
正解は2018年に入れ替わったクラスAの4人です。
このように各年に任期が満了し、同時に交替となるのは一つのクラス(全体の3分の一)だけとなります。
Staggeredは形容詞で”捻じれた・ゆがんだ・段違いの・互い違いの・たじろいだ”と言った意味があります。
またスタッガードボードは以上の様なクラス分けを行うことから、Classified Boardとも呼ばれます。
仕組み
では実際にスタッガードボードがどのように対象企業を敵対的買収から守るのかを解説していきましょう。
仮に2019年に上記の企業が敵対的買収を仕掛けられたとします。
対象企業がスタッガードボードを採用していない場合、買い手は2019年に買収が完了すると同時に12人すべての役員を一新し、経営権を掌握出来ます。
反対に対象企業がスタッガードボードを採用している場合、2019年の買収後に選任される役員はクラスBの4人(全体の3分の1)に限られます。
よって対象企業の元の役員の一掃が完了するのは最短でも2021年のことであり、最低2年掛かってしまいます。
そのためスタッガードボードは買収後すぐに役員を入れ替えて、支配権を握り改革を進めたい買い手からすると障壁となります。
また役員が一斉に代替わりすることの無いスタッガードボードは、企業の長期的なプランを実行するためのCorporate Governanceの観点からもプラスに捉えられます。
デメリット
しかし対象企業に取って良いことばかりに思えるスタッガードボードには欠点もあります。
代表的な懸念が、各役員の任期がスタッガードボード無しの場合よりも短くなる傾向にあるため、役員は株主のために頑張って働くモチベーションが低下することです。
上の例で言えば、スタッガードボード有りの場合は、12人いる役員の任期がそれぞれ3年間となっています。
一方でスタッガードボード無しの場合、12人の役員全員が一斉に入れ替わってしまうため、有りの場合と同様の3年では企業の中長期的なプランを打ち出して遂行することもままなりません。
よってスタッガードボード無しの場合は任期は少なくとも3年以上になるケースが多いと考えられます。
そのためスタッガードボードによって選ばれた経営陣は、“どうせ短期間で辞めるのだから”と、株主のために働くという責任を全うしない危険性が生じます。
こうしたデメリットからか、2016年のハーバード大学の研究によると、近年スタッガードボードを採用する企業(S&P1500&S&P500上場)は減少傾向にあることが報告されています。
気になる企業の役員層はどのような構造になっているのか調べてみると面白いでしょう。
まとめ
- スタッガードボードでは役員をクラス分けし、全員が同時期に交代することを防ぐ
- スタッガードボードにより、買い手は買収後すぐに対象企業の役員を一新することが出来ない
- スタッガードボードでは個々の役員の任期が短くなるため、モチベーションが低下する懸念も抱える
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