【ポイズンピル】毒入りの錠剤はM&A防御策の定番
定義
Poison Pill(ポイズンピル又は毒薬条項)とは対象企業が買い手の敵対的買収から身を守るための防衛策の一つです。
ポイズンピルは以前はShareholder Rights Plansと呼ばれ、企業が定款で定める条項(事前防衛策)の一つです。
ポイズンピルには大きく以下の2種類があります。
Flip-in poison pillとFlip-over poison pillです。
Flip-in Poison Pill
Flip-in poison pillとは対象企業が既存の株主(買い手は除く)に対して、対象企業の新株を割引価格(ディスカウント)で買う権利を与える仕組みのことを指します。
この権利は買い手による買収が行われる前に対象企業の既存の株主に付与され、一定の発生条件をトリガーにして発動されます。
例えば“買い手が対象企業の株式の40%を取得した場合”にトリガーするFlip-in poison pillがあったとします。
ある日買い手は対象企業の発行済み株価の60%を取得しました。
この時点でFlip-in poison pillはトリガーされ、既存の株主は対象企業が新たに発行する株式を定価より低い価格で購入する機会を得ます。
そこで対象企業は新規に株式を発行することで、全体の発行株式数は増加し、買い手が取得した株式の持分割合は低下します。
つまりFlip-in poison pillが存在すると買い手のStock Dilution(株式の希薄化)が引き起こされ、買い手は不利益を被ることとなります。
よって買い手が対象企業を買収するのに更に資金が必要となり、買収の難易度が増します。
このように対象企業が買い手を牽制する上でFlip-in poison pillは有効に働きます。
Flip-over Poison Pill
Flip-over poison pillとは対象企業の既存株主に、買い手企業の株式を割引価格で購入する権利を与えることを意味します。
買い手による買収が完了した後に、Flip-over poison pillがトリガーされます。
対象企業の株主が買い手の株式を割引価格で購入することで、買い手企業の株式価値が希薄化し、買い手の既存株主が不利益を被ります。
買い手は対象企業の買収はしたいが、自社の株主からの反発も避けたいというジレンマから、Flip-over poison pillがあることで買収が牽制されます。
しかしどちらのポイズンピルもデメリットを抱えています。
デメリット
- 新株発行時に既存株主は同様の株式保有割合を保つため新株を購入しなくてはならず、株主からの反発を招く危険性
- 一度敵対的買収に対してポイズンピルなどの防御策を積極的に講じてしまうと、市場の買い手は買収に足踏みし、今後も良い買い手が付きにくくなってしまうリスク
- 防御策によって対象企業の能力の低い経営層がずっと守られてしまう懸念
まとめ
- Flip-in poison pillは対象企業の株主が対象企業の株式を割引価格で買う権利
- Flip-over poison pillは対象企業の株主が買い手企業の株式を割引価格で買う権利
- 買い手はポイズンピルによって株式の希薄化や買収価格の増加を恐れて買収を断念する
- ポイズンピルは定款であらかじめ規定しておかなくてはいけない
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