【パックマン・ディフェンス】捕食者を捕食するためのドーピング
定義
Pac-Man Defenseとは対象企業が買い手の敵対的買収から身を守るための防御策の一つです。
Pac-Man Defenseでは買収を掛けられた対象企業が、なんと逆に買い手企業を買収してしまいます。
Pac-Man は1980年にナムコ(現在のバンダイナムコ)によって発売されたアーケードゲームです。
プレーヤーは十字キーでPac-Man を操り、追ってくるモンスターから逃げまどいます。
しかしPac-Man (対象企業)はパワークッキーを取ることで、反対にモンスター(買い手企業)を食べてしまうことが可能となることから、この名称が付きました。
資金の確保
敵対的買収では買い手企業は対象企業より規模が大きいのが普通です。
Pac-Man Defenseでは、規模の小さい対象企業が大きな買い手企業を逆に買収するため、相応の資金が必要となります。
その資金確保のため、対象企業は以下の痛みを伴った手段を講じて資金調達を試みます。
現預金の保留
自社より大きな買い手を買収するための資金を捻出するために、対象企業は平常時から現預金を蓄え、有事の際にすぐに捻出できる資金源を確保しなくてはいけません。
この時点で、本来ならば投資に充てて資産を増やすことに使うことが出来る資金を現金や預金で眠らせているため、対象企業は投資機会を失っています。
手持ちの現金を成長のための投資に使用しないことは多くの場合株主から反発を受けます。
資産の売却
また敵対的買収が掛けられた瞬間に、Pac-Man Defenseを行うため手持ちの現預金に加え、流動的な資産を売却する必要性も出てきます。
市場で高く売却できる資産は得てして対象企業のコア(中核)資産です。
仮にPac-Man Defenseが成功した場合でも、コア事業を失った対象企業の経営は難しくなります。
借入れの増加
それでも資金が足りない場合、債券を発行したり、銀行や証券会社から借り入れを行わなくてはいけません。
当然借り入れが増加することでレバレッジは増加します。
よって対象企業は買収阻止後に、膨らんだ元本・利息の支払いに追われて破産するリスクがあります。
以上のように発動に多くの犠牲やリスクを伴うため、Pac-Man Defenseは最もリスクの高い敵対的買収に対する防御策の一つと言われます。
実例
以上の犠牲を払ったうえでも対象企業の既存株主の反対や将来的な資金繰りの困難さから、Pac-Man Defenseは必ずしも成功するわけではありません。
初めてPac-Man Defenseが成功した事例は1982年のMartin Marietta(1961年設立の米国の航空機メーカー)がBendix(1924年~1983年に存在した米国のAutoメーカー)に持ち掛けられた敵対的買収に対して使用した例です。
Matrin Mariettaは敵対的買収を防いだ後、現在でも健在で、反対に買収に失敗したBendixは後に他社に買収されました。
まとめ
- 対象企業が買い手企業に対して仕掛ける買収をPac-Man Defenseと言う
- 自社より大きい買い手を買収するには相応の資金が必要となる
- 資金の捻出ため対象企業は平常時から投資機会を喪失したり、買収阻止後に破産するリスクがある
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません