【グリーンメール】脅迫状よりは優しい不思議な緑色のメール

2020年8月5日

定義

Greenmail Paymentとは敵対的買収を仄めかす企業(株主)に対して、対象企業が自社の株式を再購入(Repurchase)することで買収を防ぐことを指します。

分かりやすく例を使って説明しましょう。

ある企業A企業Bの株式を5%保有しているとします。

A社は更に保有割合を増やすため、追加でB社の株式を25%取得しました。

そして数か月後、A社は突然B社の経営陣に対してこう切り出します。

A社:「B社の残りの株全てを買収し支配権を獲得したい。買収に反対ならば敵対的買収もいとわない」

B社の経営層は売却のつもりはありません。

しかし現時点ですでにB社の30%の株式を保有しているA社による敵対的買収の成功率は高いと予想され、B社経営層は焦りました。

そこで敵対的買収を避けるため、B社A社に対してこう提案します。

B社:「A社の保有するB社の30%の株を、株価の2倍(プレミアム)で買い取るので、買収の話は無しにして欲しい」

そしてA社は保有株式の買い取り価格を数回交渉した後、全持株をB社に対してあっさりと売却し、一連の話は終了しました。

結果的にB社はGreenmail Paymentによって買収の危険性の排除に成功しました。

Greenmailer

しかしどうしてA社はB社の買収をすぐに諦め、Greenmail Paymentをすんなりと受け入れたのでしょうか?

実はA社は元からB社を本気で買収するつもりはなく、B社の経営層が株式の買い取りを提案するのを待っていたのです。

この株式のRepurchaseGreenmail Payment)によってA社は利益を得ることが出来ます。

A社の利益=(B社による買取価格)-(A社によるB社株の購入価格)-(税金)

ここでは買取価格は現在株価の2倍としているので、現在株価がA社のB社株の購入時株価より増加しているだけA社の利益は増えます。

反対にB社の現在株価が購入時株価よりも低い場合は、そもそもA社は買収の話を持ち掛けないか、更に高額の買取価格を設定するでしょう。

このように企業がGreenmailによる利益目的で投資を行う投資家(個人・企業)をGreenmailerと呼びます。

Greenmailの語源は、Blackmail(脅迫状)とGreenback(かつての米ドル紙幣)から来ています。

“脅迫状のように違法にお金を引き出すのでは無く、合法にお金を拠出する”ことからこの呼び名が付きました。

Greenmailerは敵対的買収を仄めかす以外には、投資先企業の支配権を強めて改革を行う旨などを脅迫文句として使うのが通例です。

こうしたGreenmailerが荒稼ぎするケースが1980年代の米国では散見されました。

Greenmailに対する規制

しかし対象企業の経営層や他の既存株主が一方的に不利益を被ってしまうアンフェアな状況だったため、次第に多くの国ではGreenmail目的の投資に対する規制・対策が強まりました。

例えば企業の多くがAnti-greenmail provision条項を作成し、経営陣がGreenmailによる支払を承認することを禁止するようになりました。

こうした条項があることによって、Greenmailerは企業にアプローチをすることが出来なくなります。

また米国ではGreenmailによる利益に対する税率を50%に増加させたことで、現在ではGreenmailによって利益を得ることは困難になっています。

またGreenmail Payment以外の、敵対的買収に抗する防御策が発展したことで、Greenmailの利用は格段に減少していきました。

まとめ

  • Greenmailerは企業に買収を仄めかすことで株式の買取をさせ利益を得ることを狙う
  • 対象企業は株式の買い取り(Greenmail Payment)により買収を阻止する
  • Greenmail に関する規制が強化され、現在ではあまり使用されない

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