【資本コスト】資金を集めるのに必要なコストとは?
定義
会社の経営には資金が欠かせません。
原料の購入費から、製品の生産費、労働者の賃金、在庫の保管倉庫のレンタル費用、オフィス用具の購入、家賃の支払い等など、様々な理由から常に資金が必要となります。
そこで企業は外部から資金を調達する必要性が出て来ます。
企業が資金を調達する手段には大きく分けて2つの種類があります。
Debt Financing(デッド・ファイナンス)とEquity Financing(エクイティ・ファイナンス)です。
それぞれのコストを順にCost of Debt(負債コスト)、Cost of Equity(株主資本コスト)と言います。
Cost of Capital(資本コスト)とは上記の二つの資金調達方法を持つ企業の全体の資金調達コストを表します。
資本コストを求めるためには、負債コストと株主資本コストの両方を使用したWACC(加重平均資本コスト)が使用されるのが通常です。
WACC
公式:Cost of Capital = Cost of Equity × (E÷(E+D)) + Cost of Debt × (D ÷ (E + D)) × (1 – t)
分かり易く理解するため、公式を2つのパートに分けて見て行きましょう。
Cost of Equity × (E÷(E+D))
Cost of Equity(株主資本コスト)は企業が新株や新株予約権、新株予約権付き社債を発行して行うエクイティ・ファイナンスの資金調達コストです。
株主資本コストは通常DCMやCAMPを使って計算されます。
(E÷(E+D)) のEはEquity(純資産)、DはDebt(負債)を表しています。
つまり (E+D) はAsset(総資産)を示しています。
よって E ÷ (E+D)は総資産における純資産の割合を表します。
株主資本コストに純資産の割合をかけることで、この企業がエクイティ・ファイナンスでどれくらいのコストが掛かるのかを表します。
Cost of Debt × (D ÷ (E + D)) × (1 – t)
Cost of Debt(負債コスト)は企業が負債(借入や社債)の増加によって資金を調達するデッド・ファイナンスのコストです。
負債コストは利息や負債の額を基に算出されます。
(D ÷ (E + D)) は総資産におけるDebt(負債)の割合を示します。
(1-t)のtは実効税率を示します。
最初のエクイティ・ファイナンスのパートと同じ様に、負債コストに対して負債の割合を掛けます。
ここで気をつけなくてはならないのは、負債コストは税引き前の値だということです。
負債コストの計算に使用される支払利息は売上から控除されることで、税金を減少させる効果があります。
それを加味するため資本コストの計算時には、負債コスト×実効税率を負債コストから引きます。
つまり節税効果によって実際の資金調達コストは低くなるということです。
メリット・デメリット比較
以上の二つのパートを足すことで、企業の資金調達コストである資本コストが計算できます。
通常は負債コストの方が株主資本コストより安価になりますが、デッド・ファイナンス特有のリスクもあります。
以下に簡単に各資金調達方法のメリット・デメリットをまとめます。
デッド・ファイナンス | エクイティー・ファイナンス | |
---|---|---|
コスト比較 | 低い | 高い |
資金の返還 | 期限日に元金の返済の必要あり | 元金の返済必要なし |
支払い | 業績に関わらず、発行時に指定した時期にクーポンの支払い | 配当性向や業績に基づいて、配当金の有無と金額を臨機応変に決定 |
株主構成 | 変化なし | 新たな株主に経営に口を出される可能性が高まる。増加した株式数によって希薄化が起こるリスクあり |
負債 | 負債が増加することで、返済が滞り破産するリスクが高まる | 変化なし |
企業は以上の点を考慮した上で資金調圧の手段を決定します。
多くの場合、一つの調達手段に依存せず、デッド・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの両方を組み合わせることが効果的だとされています。
まとめ
- 企業の資金調達コストを表す資本コストは負債コストと株主資本コストも基に求められる
- 資本コストが低いほど、企業が資金調達に掛かる費用が少ないことを表す
- 資金調達コストを抑えるにはデッド・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの両方を活用することが重要
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