【金色の棺】全ての企業のトップが必ず知っておくべき制度

2020年8月5日

定義

Golden Coffinとは企業のトップ層が雇用期間に死亡した場合に遺族に支払われるパッケージを指します。

Coffinは日本語で棺、棺桶のことを指します。

企業のトップ層の突然の死は遺族に取って大きなショックであり、残された遺族の生活を保障するためにこの制度が生まれました。

特に大企業のCEOなどのトップ層に就任する際には、雇用者の年齢も高齢となるのが一般的なため、有事の際の家族の生活を考慮してGolden Coffinの条項を雇用契約に盛り込みます。

企業も経験豊富で優秀なトップ層を集めるために手厚いGolden Coffinをアピールします。

米国では大多数の上場企業がGolden Coffinまたは類似の制度を採用しています。

パッケージの中身

Golden Coffinのパッケージは現金やストックオプション、保険プランで支払われるのが一般的ですが、その中身は企業によって異なります。

例えば、ある米国企業はCEOが不慮の死を遂げてから任期が満了するまでの7年間、毎月の給料を遺族に支給しました。

また就任から任期満了までに受け取るはずだったストックオプションを遺族に支給するパッケージも存在します。

ストックオプションとは社員が勤務年数や業績に応じて受け取る自社の株式のことです。

会社の業績が良くなれば自社株の価値が上がるため、社員がより企業に尽くすモチベーションとなります。

ボーナスを現金ではなく、ストックオプションで払う企業も多く存在します。

Golden Coffinにストックオプションを組み込むことも多々あります。

反対派の意見

しかしGolden Coffinの採用には反対派も少なからず存在します。

彼らの主張の一つは、給料は個人の業績によって増減するべきだという意見です。

当然故人の任期満了までの給料は故人の未来のパフォーマンスに基づくことは不可能で、死後も一定である場合があります。

つまり企業の業績が不振の年でも、その故人の遺族への支払額は変動しないことになります。

給料に加えストックオプションも支給するとなると、企業にとっては非常に高額コスト(そもそもトップ層は相応の額を受け取っていたため)が必要となります。

最近ではこうしたデメリットを考慮し、一定額の支給を無条件に約束するのではなく、ビジネス概況や市場の変化を反映するパッケージを採用する企業が増えてきています。

有事の際の企業体制

余談となりますが、金融業界は人材の動きが活発なことが知られています。

特に外資系企業では数年で目まぐるしく血が入れ替わります。

私が新卒で入った米国投資銀行も例外ではなく、50人ほどのチームは各四半期に最低1人か2人は解雇・自主退職して行きました。

成績不振のため即日解雇も珍しくはありませんでした。

自主退職の中には数か月前に上司から肩を叩かれ、それとなく数が月後の転職を促されるケースも多くありました。

またそれとは別に、金融業界では2~4年勤めてから他の企業にステップアップで転職していくのが主流です。

そのため大手投資銀行では、どんなに優れていても、“代えの効かない人材“というのは稀で、誰が突然いなくなっても会社は機能するような仕組みが構築されています。

よく社員が口にしていたのが、

“Even if the CEO dies today, the firm will continue to exist tomorrow”

仮にトップが突然代わろうとも、企業はいつでも穴を埋められるだけのリソースを蓄えているのです。

このように企業は有事に備え、遺族のためにGolden Coffinを用意するだけでなく、残された企業・社員・株主のために盤石なシステムを構築しておくことが重要となります。

まとめ

  • Golden Coffinは企業のCEOなどの経営層が死去した後に、遺族の生活を支えるための制度
  • 企業が優秀な人材を募集する上で手厚いGolden Coffinは好材料となる
  • 遺族には現金やストックオプション、保険プランなどが提供される
  • Golden Coffinの採用には賛否両論あり、企業の業績によって支給額が変動するパッケージも存在する

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