【負債コスト】デッド・ファイナンスのコスト試算
定義
Cost of Debt(負債コスト)とは企業が負債(借入や社債等)の増加によって資金を調達するDebt Financing(デッド・ファイナンス)を行う際の調達コストです。
負債コストは通常税引前のコストを表します。
この点は後で補足するので、まずは負債コストの計算方法を見て行きましょう。
計算方法
負債コストを計算するためには、まず企業がそれぞれの借入先に対して支払っている利息の金額を把握する必要があります。
借入先 | 借入額 | 期間 | 利息(年間) |
---|---|---|---|
A銀行 | 100万円 | 一年間 | 10万円 |
B証券 | 50万円 | 一年間 | 5万円 |
合計 | 150万円 | 15万円 |
その利息の総額を借入の総額で割った値がCost of Debtです。
負債コスト10%=(利息合計15万円)÷(借入総額150万円)
簡潔に言うと、それぞれの借入に対してどれだけの利息が必要とされているかを示しています。
負債コストtは高ければ高いほど借入のコストが高く掛かることを表し、より企業の信用力(返済能力)が無いことを示します。
反対に信用の高い優良企業に対しては貸し手も安心して貸せるため、負債コストは低くなります。
負債コストは通常Cost of Equity(株主資本コスト)より低くなります。
企業のデッド・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの両方による合計の資金調達コストを表したものを、Cost of Capital(資本コスト)と言います。
資本コストを計算するためには、税効果を考慮するため、税引き後の負債コストを使用します。
これは借り手が貸し手に支払う利息(クーポン)は税金から控除可能なためです。
反対に企業が株式などを発行して資金を調達する際のEquity Financing(エクイティ・ファイナンス)では税控除はされません。
After-Tax Cost of Debt(税引き後負債コスト)
負債コストtから税金を控除するため、(1-実効税率)を掛けます。
税引き後負債コスト = (負債コスト ) ×(1-実効税率)
なぜ(1-実効倍率)を乗じるのかを解説をしていきましょう。
企業は借入を行った後、元金の返済期限まで定期的に利息を払います。
この利息は企業のPL上の営業外費用の項目の支払利息として計上されます。
計算 | PL項目 | 万円 |
---|---|---|
売上総利益 | 500 | |
– | 一般管理費 | 200 |
= | 営業利益 | 300 |
+ | 営業外収益 | 0 |
– | 営業外費用 | 15 |
支払利息 | 15 | |
= | 経常利益 | 285 |
× | 法人税(40%) | 114 |
= | 当期純損失 | 171 |
上記の通り、支払利息は費用として売上総利益から引かれます。
それによって課税対象の経常利益が減少(300万円→ 285万円)し、法人税が(120万円→114万円)減少します。
結果、支払利息の分だけ税金が控除されたと言える訳です。
そのためCost of Capital(資本コスト)の計算時には、この節税効果を加味するために以下の様に負債コスト×税率を引く訳です。
税引き後負債コスト = (負債コスト) ×(1-税率)
= (負債コスト) - (負債コスト×税率)
まとめ
- 負債コストは企業が負債(借入れ・社債等)の増加によって資金を調達する際のコスト
- 負債コストはそれぞれの負債に対して払っている利息を使って計算される
- 資本コストを求める時には節税効果を考慮するため、負債コストに(1-実効税率)を乗じる
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