【ファンダメンタル分析】株価の本質的価値を算出するツール

2020年8月5日

定義

ファンダメンタル分析とは株式のIntrinsic Value(本質的価値または内在価値)を算出するための手法です。

ファンダメンタル分析では株価に影響を与えるであろうマクロ経済の状況、業界の動向、会社自体のビジネス・財務状況などを包括的に分析し本質的価値を計算します。

ファンダメンタル分析の最終的な目的は、本質的価値を算出し、現在の株価を比較することです。

詳しくは後述しますが、本質的価値が現在株価より高い状態をUndervalued、本質的価値が現在株価より低い場合をOvervalueと呼びます。

これにより投資家は今株式を買うべきのか、売るべきなのか、それとも今は手を出さないべきなのかの判断材料を得られます。

以下ファンダメンタルについて詳しく見ていきましょう。

ファンダメンタル分析の流れ

通常ファンダメンタル分析はマクロ要因(経済・政治・産業)の分析から始まり、ミクロ要因(企業自体)へと掘り進めていきます。

木を見て森を見ず―企業だけを分析しても企業が位置するマクロ経済を考慮しなくては企業の本当の価値は分からないからです。

ファンダメンタル分析は多くの場合、公開情報(Publicly available data)を使用して行うことが可能です。

例えば、投資家が債権の本質的価値を計算したい場合、Interest Rateやインフレ・デフレなど政府が公開しているマクロ要因を使用して、更に目当ての債権を発行する企業の信用格付けが変わる可能性があるのかを企業の財務データ等を分析することで、本質的な債権価値を算出出来ます。

株式の場合、ファンダメンタル分析は企業の収入や収益、収益率、成長率、ROE、その他企業の株価の要因となる指標を分析します。こうした財務データは上場企業であればアニュアルレポートなど公開情報から入手・計算することが可能です。

ファンダメンタル分析は債権やデリバティブ商品の本質的価値を算出するのにも使用されますが、最も一般的なのは株式価値の算出です。

ファンダメンタル分析と投資判断

証券アナリストはマクロ・ミクロのデータを収集し、本質的株式価値を算出するためモデルを作成します。

そして証券アナリストは算出した価値と市場株価を比較して、以下の様にBuy・Hold・Sellのリコメンデーションを示します。

算出された価値が現在の株価より高い場合>>>本来の価値は現在の市場価格より高い>>>市場で株式が過小評価(Undervalue)されている>>>市場価格が本来の価値によっていく(価格は上がっていく)と思われる>>>今過小評価されている買っておくのがお得>>>買い(Long)

算出された価値が現在の株価より低い場合も同様の論理プロセスに基づき、株式が本来の価値より過剰評価(Overvalue)されているため、売り(Short)のリコメンデーションが出されます。

投資家はこうした証券アナリストのアドバイスを参考にする訳ですが、前述の通り、公開情報を基にして投資家自身でもある程度のファンダメンタル分析は行えます。

ファンダメンタル分析の構成要素

ファンダメンタル分析という名前から、基本的なことしか分析しない簡易的な分析とよく誤解されがちですが、実際はマクロ経済の分析や財務分析など多くの要素を分析します。

ファンダメンタル分析の構成要素は大きく2つのカテゴリーに分けられます。

Quantitative Factor(量的要素)とQualitative Factor(質的要素)です。

それぞれどういったものかは直感的に分かるかと思いますが、Quantitativeは財務データ等の数字、Qualitativeは企業の幹部の経営力やブランド力、技術力など、数値化しにくい要素を指します。

ファンダメンタル分析にはどちらも重要で欠かせません。

次に証券アナリストが企業の分析を行う際に考慮する4つの代表的な要素を紹介していきましょう。

ビジネスモデル

まず企業がどういった仕組み(ビジネスモデル)で利益を挙げているのかを考えます。

居酒屋のビジネスモデルを一つ取っても、お酒から利益の大半が来るのか?

原価の安いおつまみの利益貢献が大きいのか?

はたまたお手頃ランチが実は主な収入源なのか?

などなど深度が深く、精度の高い分析が求められます。

Competitive Advantage(競合優位性)

他社と全く同じで特徴の無い企業はいずれ廃れていきます。ラーメン店などは良い例です。

市場での需要(顧客)が大きい分、同業他社も増えるため、競争は激化します。

向かいのラーメン屋が真似出来ない看板メニューやブランド力(暖簾)、価格帯、サービス等の独自性があって初めて競合優位性が生まれます。

企業の価値を図る上で競合優位性の評価は欠かせません。

経営力

投資家の中には企業の経営層の力量を重視する方も珍しくありません。

どんなに良いビジネスモデルを持っていて、競合優位性があっても、それを適切に利用できる経営陣がいなければ宝の持ち腐れです。

一個人投資家が経営層に直接会って、実力を知ることは難しいでしょう。

しかし企業が公開しているアニュアルレポートや中長期計画や、株主総会の質疑応答などを参考にすることで、経営層がどのように企業をマネージしているかはある程度把握できます。

また経営層が自社株をどれほど保有しているかも、経営層が企業の将来をどう見ているかの判断材料となります。

コーポレートガバナンス

昨今日本企業でも定着して来たコーポレートガバナンスも企業の価値を精査する上で重要となります。

株主と経営陣の関係が健全で、透明性の高い経営を行っている企業の価値は高くなります。

企業の属する業界の概要、規制、ビジネスサイクル、成長性、各プレーヤーのマーケットシェア、顧客ベースなどの情報も企業の価値を算出する上で有益です。

まとめ

  • ファンダメンタル分析は株式の本質的価値を求めるために使用される
  • ファンダメンタル分析ではマクロ分析・ミクロ分析・量的要素・質的要素など多くのファクターを分析する
  • ファンダメンタル分析によって導き出した本質的価値と現在の株価を比較し、投資判断を行う

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