【エクイティ・ファイナンス】株式による資金集めのデメリットに気付いてますか?
定義
Equity Financing(エクイティ・ファイナンス)とは企業が新株や新株予約権などを発行して資金を調達する手法です。
Debt Financing(デッド・ファイナンス)と違い、株式によって調達した資金は返済する必要がなく、借り手のバランスシートの純資産の部に計上され、負債が増えることはありません。
しかし返済の必要がない代わりに、株式では通常配当金を株主(投資家)に配る必要があります。
配当
企業のポリシーや業績によって、利益の何%を配当に回すか(配当性向)が決められます。
経営が成熟して安定して利益を上げている企業では、定期的に利益のX%を配当に回し株主に利益を還元することが出来ます。
日本の上場企業の平均配当性向は約30%と言われています。
業績が振るわなかった時期には、配当を減らしたり、配当を行わないことも可能です。
業界や企業のライフサイクルによって配当性向の度合いに特徴が見られます。
例えば米国のユーティリティ(電気・水道・ガスなど)業界やテレコム(通信)業界は株主配当が高いことで知られています。
一方でスタートアップやVCなど、シードから成長ステージの企業ライフサイクルにある企業は、利益を配当金に回さずに自社の成長のための投資に回すのが一般的です。
それによって企業が成長し株価が上昇すれば投資家は利益を得ること(キャピタルゲイン)ができるので、必ずしも0配当が株主にとって悪とは言えません。
ただし成長プランが無いまま闇雲に利益を現金として社内留保している場合、株主から剰余金を配当するべきだと言う声も上がるので、経営層は優れた判断力が求められます。
デメリット
近年日本では企業の経営に積極的に意見する“物言う株主”が増えてきました。
前述の配当の有無に関する意見の他、企業の経営プランや役員の選任、事業の売却など多方面に渡って株主は経営陣に対して意見をします。
株主としては企業の業績によって保有株式の価値や、配当の有無が決まるため、株主として当然の権利を全うしているに過ぎません。
大株主となれば相応の議決権を持つため、経営陣に対しての発言権も強まります。
近年では物言う株主が経営に影響力を持つことを嫌い、上場した後にManagement Buyout(MBO)によって非上場にして株主を取り去ったケースも多々あります。
このように企業が株を発行して資金を調達する際には、株主が経営に対して一定の力をもつことをよく理解する必要があります。
エクイティ・ファイナンスの使用時に企業が留意しなくてはならない点の一つが、Stock Dilution(株式の希薄化)です。
Stock Dilution
企業が新株を発行することで、資金を調達する際、その分発行株式数は増えます。
それによって、既存の株主の保有比率が低下してしまう、Dilution(希薄化)が生じてしまう危険性があります。
簡単な例を挙げて解説しましょう。
ある企業は100株発行していて、5人の投資家がそれぞれが20株ずつ保有しています。
各株主の保有株式割合20% = (保有株式数20株) ÷ (発行済株式総数100株)
株主 | 保有株式数 | 保有株式割合 |
---|---|---|
A | 20株 | 20% |
B | 20株 | 20% |
C | 20株 | 20% |
D | 20株 | 20% |
E | 20株 | 20% |
合計 | 100株 | 100% |
ここで資金調達のため、新たに20株を2人の投資家に10株ずつ発行したとします。
株主 | 保有株式数 | 保有株式割合 |
---|---|---|
A | 20株 | 16.7% |
B | 20株 | 16.7% |
C | 20株 | 16.7% |
D | 20株 | 16.7% |
E | 20株 | 16.7% |
F | 10株 | 8.3% |
G | 10株 | 8.3% |
合計 | 120株 | 100% |
すると発行済株式総数が120株に増加し、元々いた5人の株主の保有株式割合が20%から16.7%に減少します。
各株主の保有株式割合16.7% = (保有株式数20株) ÷ (発行済株式総数120株)
つまり水かさが増した分だけ元々の濃さが薄まってしまう、希薄化が引き起こされます。
当然既存の株主からは不満が出る可能性があるため、企業はエクイティ・ファイナンスの実行に慎重にならなくてはいけません。
エクイティ・ファイナンスに掛かるコストをCost of Equity(株主資本コスト)と言います。
新株予約権付社債
また株式と債権の両方の側面を持った新株予約権付社債もエクイティ・ファイナンスに利用されます。
新株予約権付社債とは簡単に言うと、社債としてクーポンの利息を受け取りつつ、もし投資家が株式に交換したいと思ったときに、会社の新株と交換できるものです。
仮に投資家が株式に交換したくなければ、社債のまま満期を迎え元金の返済を受け取ることができます。
クーポンは会社の業績に関わらず、決められた時期に企業から債権者に対して払われます。
一方で配当は会社の業績が悪ければ、前期より配当額が減少したり、場合によっては配当が0のこともあります。
したがって多くの場合投資家は、業績が振るわない時には新株予約権付社債を債権として保有した方が良いと考えます。
反対に企業の業績が上向きの時には、株価は上昇し、利益を配当に回すことが期待されます。
そこで投資家は新株予約権を行使し、新株と交換することで株式としてのメリット享受することができます。
まとめ
- エクイティ・ファイナンスは企業が新株や新株予約権、新株予約権付き社債を発行することで行う資金調達の手法
- 資金の返済が必要ない代わりに、企業は株主に配当を行ったり、議決権を付与したりする
- 株式の発行には株式の希薄化で既存株主から不満が出たり、経営に影響力を持つ物言う株主が出たりする懸念がある。
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