【マネージメント・バイアウト】企業を自分のものにしたいなら

2020年8月5日

定義

Management Buyout(マネジメントバイアウト・MBO)とは既存の経営陣が株主から自社株を買い上げる手法を指します。

既存の経営陣がMBOを行うのにはいくつかの動機があります。

例えば上場企業の経営陣が企業の株式をすべて買い取ることによって、非上場化する目的でMBOが行われます。

ご存知の通り上場にはメリットもありますが、市場や株主の監視下にさらされることで、多くのデメリットもあります。

上場することで常に株価を意識し、株主の利益の追求に取り組まなくてはならず、また財務諸表の開示や、株主総会の開催など様々な責務が課されます。

そこで経営陣はMBOによって非上場化することでこうした責任から解放され、中長期的な視点で企業の成長に注力することが可能となります。

また非上場化することで敵対的買収にさらされる危険が無くなります。

こうした目的のMBOは特にPrivate Equity (PE) Fundに歓迎されます。

PE FundはMBOによって上場企業を一旦非上場化し、成長させた後に再上場させることで更に高いValuationでのExitを期待するためです。

また企業を非上場化することで、経営者が利益を独占できることもMBOの動機の一つです。

MBOの逆で、第三者企業が企業を買い上げ、既存の経営陣と入れ替わる手法をManagement Buy-inと呼びます。

MBOがManagement Buy-inと比較して優れているのは、Management Buy-inで社外から来た新しい経営陣より、既存の経営陣は事業についての理解が深い点です。

また経営陣に変化がないことで一貫した経営が行われます。

一方でMBOにはリスクやデメリットもあります。

デメリット

既存の経営者と言えども、被雇用者であった立場から、MBO後に雇用者・事業主へと立場が変わることで、マインドセットのチェンジが必要とされます。

MBO後に経営陣による経営が上手くいかずに規模が縮小、果ては倒産する企業も出て来ます。

また非上場化することで市場からの資金調達が困難となります。

非上場化で市場や株主からの経営の監視が弱まることも怠慢な経営を招きかねません。

MBOの資金

さて当然経営陣が企業の株式を買い上げるためには資金が必要です。

よほどの資産家ではない限りポケットマネーのみで企業を購入することは出来ません。

そこで自己資金+借入れを行うこととなります。

借り入れによって買収を行う点ではLeveraged Buyout (LBO)とも類似しています。

しかし通常MBOで必要な借入れ額はLBOより少なくなります。

それほど大きな企業を経営陣だけで買い上げし、非上場化することは現実的ではないからです。

借り入れの資金元としては銀行、証券会社の他にMBOを支持するPE Fundなどが考えられます。

与信リスクに重きを置く銀行から借入れを行うには相応の採算性と担保が要求され、容易ではありません。

しかし銀行からの借入れが行えた暁には、市場に対して企業の経営陣が一定の信用力があることをアピールすることが出来ます。

一方でヘッジファンドやPE Fundからの借入れは比較的容易ですが、将来的にExitする際に利益を分配しなくてはならないデメリットもあります。

またMBO後に経営が停滞し思うように企業が成長しなければ、資金を貸したPE Fundは経営層を外部から連れてきて、既存の経営層と挿げ替えてしまう可能性もあります。

よって経営陣がMBOを行ったものの、実際は影でPE Fundに操られてしまう、名ばかりのMBOが多いことも事実です。

経営陣はMBO後の計画を緻密に練り、借入先のメリット・デメリットを比較した上で、借入先と借入れ総額を決定する必要があります。

日本におけるMBOの例

日本では90年代後半からMBOが盛んとなり、銀行からの借入れの他に、劣後ローンや優先株を組み合わせるケースも増加しています。

また近年では物言う株主のプレッシャーから逃れるためにMBOで非上場化を選択する経営者も増えています。

2006年にすかいらーくの創業家が野村プリンシパル・ファイナンスから資金を調達し、MBOを行いました。

その後すかいらーくは2015年に再上場を成し遂げました。

また2008年には準ゼネコンのフジタがMBOを行い、翌年にゴールドマン・サックス系列の投資会社の新設した持株会社の完全子会社となり、日本の歴史でも稀な外資系のゼネコンが誕生しました(後2012年に大和ハウス工業によって買収)。

他にもタワーレコード、スシロー、吉本興業、幻冬舎、ホリプロ、アデランスなど消費者にもお馴染みの企業がMBOを経験し、実例は枚挙にいとまがありません。

経営陣ではなく従業員による買取をEmployee Buyout (EBO)、両者によるものを Management and Employee Buyout (MEBO)と呼びます。

まとめ

  • MBOは既存の経営陣が企業を他の株主から買い取る手法
  • 買取資金の調達には借り入れや劣後ローン、優先株などが利用される
  • 資金の調達先によってはMBO後に影響力を増して、実質的に会社を支配するPE Fundなども存在する

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