【タグアロング&ドラッグアロング】少数株主を守るのはどちらか?
Tag-Along Rights(タグアロング)
Tag-Along Rights(タグアロングライツ)とは大株主が保有する株式を売却するときに、少数株主も同様の条件で保有株式を売ることが出来る権利です。
タグアロングライツは投資家が株式を購入する際に権利の有無が交渉されます。
スタートアップ企業など、成長性の高い企業が初期段階で株式を発行する際にタグアロングライツはよく盛り込まれます。
スタートアップ企業への投資をメインにするベンチャーキャピタル企業などは、投資先のスタートアップが成長して来た頃合いに、自らのネットワークで買い手を探し有利な価格や条件で保有株をセカンダリー市場で売却しExitを図ることを得意としています。
一方でそうした力を持たない少数株主にとって、成長が未知数のスタートアップ企業の株式を市場で売ることは難しく、流動性の低さが問題点の一つです。
その際にタグアロングライツは有効に機能し、少数株主の株式の流動性を高めます。
タグアロングライツはCo-sale rightsと呼ばれることもあります。
タグアロングライツが利用される一例を紹介します。
使用例
3人の大学生が集まって自転車の自動運転装置を開発するスタートアップ企業を作りました。
起業から1年後、自動運転装置の開発が完了し試験運転の結果も良好。
いざ商品化に向けて更なる開発・宣伝資金が必要となりました。
そこで手を挙げたのが自転車業界に詳しい機関投資家で、業界に精通し、強力な人脈も持っています。
これを知っていた3人は、タグアロングライツの盛り込みを条件とした上で、スタートアップ企業の70%の非上場株式を一株1万円でその機関投資家に譲渡しました。
譲渡が完了した時点で大株主(70%)は機関投資家となり、残りの30%を創業者の3人がそれぞれ10%ずつ(+タグアロングライツ)を少数株主として保有しています。
その後1年間、自動運転装置を搭載した自転車は飛ぶように売れ、最初は小さかったスタートアップも大きくなり、業界での知名度も高くなりました。
スタートアップが十分に成長したことで、機関投資家(大株主)は今なら上場して投資額の5倍で市場で売れると判断し、保有する70%の株式を売却してExitすることにしました。
そこで機関投資家は持ち前の業界ネットワークを生かし、一株5万円で買い手を見つけ交渉に入ります。
ここで3人の創業者もタグアロングライツを行使することで、機関投資家は少数株主の保有する株式も売却株式の中に含め、一株5万円で売らなくてはいけません。
このようにタグアロングライツは少数株主を守る権利となっています。
英語のTagは口語で動詞として使われると、“~に付きまとう”とか“くっついて離れない”という意味を持つので、少数株主が大株主にくっついて離れないイメージを持つと覚えやすいですね。
Drag-Along Rights(ドラッグアロング)
反対にドラッグアロングライツは大株主を守るために機能します。
大株主が持ち株を売却する際に、少数株主もDrag(引っ張って)して同様の条件で株式を売却させる権利がドラッグアロングライツです。
大株主が保有する企業の売却を考えたときに障壁となるのが少数株主の存在です。
企業買収を通じて大株主となる時に、多くの買い手は会社の支配権や100%の株式の取得を求めます。
その際に売り手企業の既存の大株主は売却に賛成でも、少数株主が売却に反対した場合、興味を失い手を下ろしてしまう買い手も少なくなりません。
このケースを避けるため、大株主はドラッグアロングライツを行使し、少数株主に保有株式を同様の条件で強制的に売却させることが可能となります。
ドラッグアロングライツは株式発行・取得の際に有無が交渉されます。
ドラッグアロングライツは大株主を助ける権利である一方、少数株主にとってもメリットとなるケースもあります。
それは大株主からドラッグされることで、少数株主単体のネットワークや交渉力ではとても実現できないような価格や条件下で株式の売却が可能となるから。
つまり少数株主も大株主と同様に株式の売却に賛成の場合、ドラッグアロングライツは両者にプラスに働きます。
まとめ
- タグアロングは大株主が保有する株式を売却する際に、少数株主も同様の条件で株式を売ることが出来る権利(少数株主が行使)
- ドラッグアロングは大株主が保有する株式を売却する際に、少数株主に同様の条件で株式を売却させる権利(大株主が行使)
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