【ポイズンプット】それでも毒入りリンゴを食べますか?
定義
Poison Put(ポイズンプット)とは対象企業が、買収成立後に期限前償還される社債を発行して買収から身を守る防御策の一つです。
何のことかピンと来ないと思うので、分かりやすく例を使って説明していきましょう。
買い手企業A社は対象企業のT社に買収の話を持ち掛けました。
しかしT社は売却について乗り気ではなく、A社に断りの返事を入れます。
しかしA社は買収を諦めず、敵対的買収に乗り出すことをT社に宣言します。
ここでT社はA社が買収に掛かる資金を増やすことで、買収を断念させようと考えます。
T社はその手段として以下の二通りの防衛手法を考えました。
手段①:Flip-in Poison Pill
Flip-in Poison Pillでは自社の発行株式数を増やすことで、買い手が支配権を得るために必要な株式の取得数を増加させ、買収に掛かる資金を増やします。
しかしT社は新株を発行することで、Stock Dilution(株式の希薄化)によって自社の株主が不利益を被るのを嫌うので、Flip-in Poison Pillの使用は見送りました。
そこでT社は株式ではなく、社債に注目したポイズンプットを採用します。
手段②:Poison Put
ポイズンプットではT社が、“A社による買収が成立した後に期限前償還が可能となる社債”を新規に発行します。
これによりT社の社債所有者は、A社による買収が完了した後にA社に対して社債の買取を強制させることが出来ます。
ポイズンプットの存在によって、A社は買収価格に加え、買収後の社債の償還費用(通常は現金払い)も用意しなくてはならず、増大した買収コストによって最終的にT社の買収を諦めました。
このようにポイズンプットは既存の株主利益を害することなく、買い手に買収を踏みとどまらせる有効な防御策です。
こうした防御策はMacaroni Defense(マカロニが鍋の中でゆでられて嵩を増す様子)とも呼ばれます。
デメリット
しかしポイズンプットにはデメリットもあります。
それは買収の話が持ち上がる以前から、社債の発行数が多い企業にとってポイズンプットは命取りとなる点です。
仮に対象企業が新たな償還条件付きの社債を発行し、買収の阻止に成功したとします。
この場合、買収が期限前償還の条件だった社債はトリガーされません。
しかし当然社債は存続し、対象企業は新規発行分の利息を返済していく必要があります。
そのため平常時から債権の発行が盛んだった企業からすると、新規の社債発行によって更にレバレッジが増加し、短期的な流動性や中長期的なSolvencyのリスクが増大します。
よってポイズンプットの使用によって買収阻止後に利息未払で破産に陥る企業も出てきます。
対象企業の経営層は他の買収防衛策と将来的な自社の返済能力を考慮した上で、ポイズンプットを採用するかどうかを慎重に決定しなくてはいけません。
まとめ
- ポイズンプットは対象企業が、買収成立後に期限前償還される社債を発行する手法
- 買い手企業は買収成立後に期限前償還に応じて現金の支出が必要となり、買収コストが増加する
- 対象企業はポイズンプットで買収を阻止しても、社債が増加することで経営不振に陥るリスクが伴う
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